感想: ドラゴンクエストIX 星空の守り人

ドラゴンクエストIX 星空の守り人

ドラゴンクエストIX 星空の守り人

今月11日に発売されたドラゴンクエストシリーズの最新作。僕はドラクエシリーズは2から全部やっているファンですので、当日に手に入れて仕事もそこそこにやり込み、一週間ほどでクリアしました。プレイ時間は50時間。ドラゴンクエストシリーズのプレイ時間としては平均的なところでしょうか。ただ、今回は携帯機ということで、出先でもプレイできますから、そんなに時間を取られたという感じはないです。
個人的な評価としては、半ば伝説化している2,3,4,5とは比較になりませんが、最近のドラクエでは一番楽しめました。ところがamazonのレビューでは2.5と酷評されているんですよね。一方楽天のレビューでは4.3となかなかの評価です。
2ch等を見ても評価が割れすぎていて、何を信じたら良いのかよくわかりません。というわけで、僕なりにプレイしてみて感じたことを列挙してみたいと思います。完全にネタバレですので、未プレイの方はご遠慮ください。

携帯機のドラクエ

先ほども書きましたが、今回は携帯機で出る初めてのドラクエです。個人的にはこれは非常に嬉しかったです。電車の移動時間に手軽にできますし、家の中でも場所を選ばずにできます。考えてみると、RPGというのは個人で遊ぶゲームで、アクションゲームやパーティゲームのようにみんなで遊ぶものではありません。そうなるとテレビの前でやる必要はなくて、「いつでも好きなときにできる」というのが本来のあるべき姿です。
もちろん携帯機はバッテリで動作する必要がありますから、据え置き機に比べるとマシンパワーは落ちます。実際ドラクエ9のグラフィックはドラクエ8と比較すると見劣りするものでしたし、所々で処理落ちが発生していました。
これは基本的トレードオフですので、どちらが良いかを決めることはできません。ただ個人的には、このように新しい遊び方を模索するのは、シリーズにとってもユーザーにとっても良いことだと思います。従来のやり方を続けるほど新しいチャレンジはやりにくくなりますし、そうすると新しい面白さを生み出すのは難しくなります。FF11がオンラインゲームになったり、ドラクエ9が携帯機向けになったのは、タイミング的に良かったのではないか、と思います。

シンボルエンカウント

シンボルエンカウントへの変更は、ドラクエ基本的な遊び方を変えてしまう大きな変更でした。従来のランダムエンカウントではアクション性が全くなかったのですが、今回はキー操作の上手さによって難易度が大きく変わることになります。
アクション性があるのは全くダメ、だからゲームはRPGしかやらないという層は確実に存在するのではないかと思います。(少なくとも、僕の周りには何人かいます。)そういう人たちが今回の変更をどう受け止めたのかは、正直わかりません。ただ、シンボルエンカウントにはマザー2という偉大な先輩がいて、広く受け入れられていますので、堀井さんにはある程度勝算があったのではないかと思います。
個人的には、シンボルエンカウントになったのはとても良かったと思います。良かった点を挙げていくと…

  • フィールドの移動時に無駄な戦闘をしなくてよくなった。マザー2と同様に、レベル差がありすぎると敵の方から逃げてくれる。プレイがスムーズになるし、無駄に経験値が入らないので、バランスがヌルくならない。
  • モンスターごとにフィールド上の挙動に違いがあって面白い。敵はキャラに気づくと襲ってくるのだが、まっすぐ突っ込んでくるヤツ、追尾してくるがしばらく逃げると諦めるヤツ、いつまでも追ってくるヤツなどがいる。特にはぐれメタルは特殊で、こちらに気づくと凄いスピードで逃げていく。「なるほど、はぐれメタルってこんな感じで逃げるのかー」と、ちょっと笑ってしまった。
  • 練金の材料を集めるときなど、特定のモンスターと戦いたいときに便利。

全体的に、一度シンボルエンカウントに慣れてしまうとランダムエンカウントはなんだか不自然な気がしてしまいます。常にモンスターに不意打ちされているようなものですよね。
本当はFF12のように、シームレスにバトルに移行するのが理想だと思うのですが、マシンスペック的にそこまでは無理でしょうね。今後のドラクエは、もうランダムエンカウントに戻す必要はないように思います。

ストーリー

ストーリーについては、大きな流れはありがちと言えばありがちで(エルギオスの下りはダイの大冒険っぽかった)、シリーズの中では平均以下だと思いましたが、細かいエピソードはさすがの堀井節でした。まず一番最初のリッカとリッカのお父さんの話で感動してしまい(体に良い水とか、伏線の張り方がうまい)、その後ベクセリアのエピソードの終わり方に呆気にとられたり、石の街の病みっぷりに驚いたりと、かなり楽しめました。
特に主人公が人間ではなく力を失った天使で、死者の魂を見たり会話したりできるというのが良いギミックになってましたね。今までのシリーズでもそういう場面はあったのですが、今回は天使の能力として最初に説明されるので、「これを見ているのは主人公だけなんだ」というのが明確です。

さらに凄いなあとおもったのは、エピーソードが単発で終わらないことです。ちょっと長くなりそうなので一つずつ挙げていきたいと思います。

ウォルロ村

村長の息子が宿屋を引き継ぐのですが、そのうち真面目にやらなくなり、エンディング後はリッカのおじいちゃんが指導して宿屋を建て直します。村長さんや村長の娘さんの会話もその都度変化して、芸が細かいです。

ベクセリア

妻の死から立ち直ったルーフィンは、研究の傍ら子供たちに勉強を教え始めます。エンディング後は、彼は大人相手にも考古学の授業を始めます。夜には妻の霊が傍らにいるのですが、彼はそれを知覚することができません。一方、彼の授業を受けた子供が、遠くエルシオン学園に入学したり、セントシュタインの子供がルーフィンの元で勉強したいと言ったりします。

石の町・エラフィタ

石の町を作った石工が死んだ後、一匹のスライムがそこを守っています。その後エラフィタに行くと、石工が愛した女性が既に他の男性と結婚していること、その男性が彼女を納得させるのに10年かかったことが語られます。女性はその時は「過去のこと」と言うだけなのですが、エンディング後に女性が石の町を訪れたこと、まだ石工のことを忘れていないことが語られます。

とにかく新鮮なのは、「エンディング後」があることです。今までのドラクエでは、ラスボスを倒しても隠しダンジョンに行けるようになるだけで、世界には特に変化は起こらないのですが、ドラクエ9では世界全体が非可逆的に変わってしまいます。
「めでたしめでたし」の後が語られるわけで、これは物語の構造的には、最大の変更点と言ってよいのではないかと思います。クリアした時点で止めてしまった方は非常にもったいないので、是非ルーラでいろいろな場所を回ってみてください。きっと面白い発見があるはずです。

仲間のこと

一方、気になったのは仲間のことです。主人公が天使という非常に特殊な存在ですので、仕方ない面もあるのですが、仲間が仲間扱いされていないというか、まるで傭兵みたいです。特に天使界に行くときに勝手に消えて、人間界に戻ると出てくるのは酷い。何かこじつけて、一緒に天使界を歩かせてもよかったんじゃないかと思います。命をかけて一緒に戦っているんだから、何の説明もないなんて…ねえ。今回の話をノベライズする人は相当困るのではないでしょうか。
ネット上で散々に非難されているサンディに関しては、それほど気になりませんでした。確かにアクは強いですし、評価のところで「戦闘回数のわりに果実が集まってないよ!」と言われると、「うるせーゆっくりやりたいんだよ!」と言いたくなりますけど。エンディング後は完全にデレてますよね。

戦闘バランス

amazonでは戦闘バランス(特にボス戦)がヌルいという評価があるのですが、個人的には最近のドラクエでは厳しい方だったと思います。初めて宝の地図に行って、黒竜丸に焼き殺されたり、エルシオン学園で初代学長に撲殺されたりしてました。ラスボス戦も僧侶がマヒしてしまったせいで一気にピンチになり、パラディンガードが運良く発動したので時間を稼いで勝てましたが、あれがなかったら無理だったと思います。(ピンチな場面でパラディンガードが来たときのキター感は凄いです!)
バランスというのはすごく難しくて、万人が納得するものを作るのは無理です。ただ個人的な感覚では、これ以上難しくするとあまりRPGが得意でない人が諦めてしまうのではないかと思います。

マルチプレイ

今回のドラクエは、友達と協力プレイできるというのが売りの一つでした。実際にやってみたのですが、格段に面白くなる、という感じはありませんでした。どうしてもクリアできないところで友達の力を借りる、というのであれば意味がありそうなのですが、レベルが同じくらいだと、協力するメリットが薄いのです。自分で育てた仲間の方が使いやすいですしね。
ただ、ある程度育ってくると、もしかしたらメリットがあるのかなと思いました。なぜかというと、シナリオ中に「秘伝書」という一つしか手に入らないアイテムがあるのです。特に「楯の秘伝書」が重要で、これは敵の痛恨の一撃を完全に防いでくれます。普通はパーティで一人しか持てませんが、マルチプレイなら全員が持つことができます。
宝の地図の超強いボスを協力して倒す、というのが想定されている用途なのかもしれませんね。

最後に…

今回のドラクエは、システムや物語の構造ですごく冒険していて、従来との違いに戸惑った方も多かったのではと思います。良くなったところもあるのですが、悪くなったところもあります。でも、総じて面白い作品でした。作ったスタッフの皆さんに、心からお疲れさま、そしてありがとうございましたと言わせていただきたいです。そして、次は最高と言える作品をお願いします!